よもやま話第6話 お餅と歯がため、数え年

先日、お餅を食べていて、少し固い皮の部分を噛んだら、何か奥歯にギクッと違和感が走りました。何かおかしいと歯を磨くと白いかけらがぽろっと落ちました。そうなんです。奥歯の一部が欠けたのでした。虫歯の無いのが自慢の丈夫な歯でしたが、年と共に違う心配が出てきました。虫歯にならない堅い歯質なのはいいのですが、「歯が強すぎて歯茎の病気になりやすいですよ」「歯質が堅すぎて長年使ってきた歯が欠ける恐れがあります」と歯医者さんから言われていたのが現実になったのです。幸いに「すぐに来なさい」と言っていただいたので、早速に歯医者さんに走って行き、欠けたところに詰めてもらいましたが、これでは、正月の「歯がため餅」は出来ないな、と、年を感じてしまいました。

元旦、正月三ヶ日、あるいは正月6日に「歯固め」と言って長寿を願う習俗があります。「歯がため餅」とは、その時、食べるものの一つです。「歯固め」としていただくものは、餅だけに限らず、串柿やかち栗、飴、豆などいろいろあり、平安時代、宮中で「歯固め膳」が出されたようです。また、正月の餅を保存しておいたものを、「氷の朔日」と言って、6月1日に「歯固め」として食べる習俗もあります。固いものを食べて歯を丈夫にということと、その年の魂の象徴である餅をいただいて長寿を願う習俗と言われています。

本来、お正月は、その年の「いのち」を新たにいただくための行事です。その象徴的なまつりごとが鏡餅をまつることで、その年の霊魂(たましい)をいただくことがお餅を食べることです。だから、みんな同時に、その年の「たましい=いのち」をいただいて、「数え年」で年をとったのです。数え年は、「いのち」をいただいた年数を示すものであったのです。その「いのち」をしっかりと固める、という意味が「歯固め」の習俗にはあると言われています。「歯」は「齢」につながっているのです。

歯が欠けるようでは、しっかりと歯固めができない、ということになってしまいますが、今まで虫歯もなく頑張ってくれた我が歯ですので、大切に使いながら、気持ちは、しっかり固めていきたいと思います。